不動産を売却する場合に必要になる権利証ですが、その権利証を紛失してしまった場合の対応を以前の記事で紹介しました。
ただ、それだけでは済まないケースがあります。
それは、住所変更手続きをしていなかったケースです。
前住所通知制度を利用する
不動産の住所変更をしていなかった人が権利証を紛失してしまった場合には、法務局による前住所通知がなされることになります。
移転前の古い住所宛てに、名義書換えについて異議がないかの照会文書が法務局から発送されます。
こちらの文書が「異議がある」として返送されなければ、登記手続きが進むことになります。
ただ、この手続きは、異議申し立てがされないかどうか、確実性に乏しい手続きになってしまうため、不動産の売買の場面にはそぐわないこととなります。
例えば、買主が売買代金を全額支払い、登記を申請したにも関わらず、どこからか異議申し立てがされて名義変更ができない、というリスクをはらむこととなります。
住所変更手続きをして3ヶ月待つ
このような事態を避ける方法として、住所変更手続きをして3ヶ月待つ、という方法があります。
前述の前住所通知については、住所変更手続きがされてから3ヶ月以上経過している場合には不要になる、という決まりがあります。
そのため、住所を移転した際には、なるべくその都度、住所変更手続きをしておくことがおすすめです。
一方、売買契約が決まって急いで住所変更手続きを行う場合でも、契約の際に決めた引渡しの時期によっては、間に合わないケースもあるかと思います。
司法書士による本人確認情報の提供
その他の方法としては、権利証の代わりとして司法書士が作成した本人確認情報を提供する、というものがあります。
この場合にも、提供された本人確認情報の内容から、登記の申請が本人からなされていることが確実であると登記官が判断した場合には、名義変更の登記が滞りなく進むこととなります。
不動産取引の現場においては、この方法がスケジュール的にもリスクの面においても、最も適当として採用されるケースが多いようです。
ただ、デメリットとしては司法書士に対する報酬が発生するという点があります。
前回と同じ結論になりますが、まずは権利証を大切に保管し、紛失しないことかと思います。
そして、住所移転を行った場合には、随時、住所変更手続きを行うことをお勧めします。